episode.1 出会いは突然に

2/22
前へ
/227ページ
次へ
空白の座席を元の位置に戻す暇もなく、続けて3人の男子生徒がやって来て私の周りに腰を下ろした。    よりによって、苦手な男子に囲まれてしまうなんてツイてない。 男子が嫌いなわけではないけれど、どう接していいのか分からない。 緊張してあまり上手く会話が出来ない。 小学生の頃は、男女問わず仲の良い子が多かった。 でも、中学へ上がって異性とほとんど話さなくなってしまった。 高校生になっても、必要最低限の言葉しか交わしたことがない。 消極的な自分は卒業して、みんなと楽しい高校生活を送りたいと思って3年。 結局、何も変われないでいた。 電車に揺られる私の視線は、さっきから、前に座っている男子のズボンに向いている。 彼らの会話が、研ぎ澄まされた私の耳を通過していく。 別に聞きたいわけじゃない。 聞こえるから仕方ないの。 どこを見ていたら良いのか分からず、ただ、「早く降りてくれないかな」と、ずっと考えている。 だって、向かい前からずっと視線を感じているから。 目を泳がせて、男子生徒のズボンから窓の外へ目線を変えた。 緊張と怖さで、前を向けない。
/227ページ

最初のコメントを投稿しよう!

124人が本棚に入れています
本棚に追加