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私は、出来る限りの笑顔を作った。
「でも、みんな精一杯やったんだ。 いい思い出になったよ 」
面倒な女と思われたくなくて、気丈とした態度を演じた。
本当は、泣きたい気持ちもあった。
入賞したかったけど、それだけが大事なわけじゃないのも、分かっていた。
「じゃあ……結奈ちゃんには、僕が特別賞をあげるよ。 ほんとによく頑張りました 」
そう言って、湊くんは私の頭をポンっと触った。
それから、私の髪に優しく触れて、そっと耳にかけた。
触れられた頭と耳は、一瞬にして熱を帯びた。
心臓の音が、町中に響いているのでは、と思う程大きくなっていた。
王子のような湊くんの顔が近すぎて、私は硬直した体をそのままに、視線だけが泳いだ。
耳元でパチンと音が鳴り、ふと我に返る。
違和感を感じて、そっと髪に手を伸ばすと、髪飾りが付けられていた。
「ほんとは、お菓子のお礼なんだけどね。 クッキーもケーキもおいしかったよ。 結奈ちゃんって、料理上手だよね 」
「ありがとう……すごく嬉しい 」
嬉しさを堪えきれず、私は緩む唇を恥ずかしく思って手で覆った。
ーーあなたが好きです。
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