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比茉里ちゃんが指差す先には、昨日電車で会った男子生徒たちが歩いていた。
その中で一際目立つ長身の男の子。
「……天使くんだ 」
思わず心の声が漏れると、彼女はキョトンとした表情で数回瞬きをした。
「天使って、もしかして星名くんのこと? 」
「あっ、いや……昨日、たまたま電車で前の席に座って。 こんな綺麗な人、同じ学校にいたんだなぁって思ったのを思い出して 」
急に恥ずかしさが込み上げて来て、ポッと頬を染める。
天使だなんて、私ったら何言っちゃってるんだろう。
「結奈ちゃんが、そんなこと言うの珍しいね。 星名くん……モテそうだけど結構アリだね。 うん、藤波くんより全然良い! 」
「良いって……別に、好きとかじゃないよ? 」
私が慌てて否定すると、比茉里ちゃんは弾むような声で話を続けた。
星名湊という名前からして、煌めいている彼。
3年2組、理系特進科クラスの中でも常に成績トップ。
王子のような容姿と優しい性格から、彼の事を好きな女子も多いらしい。
あまり周りを気にしたことがなかったから、全然知らなかった。
「結奈ちゃんは、ほんとに同じクラスの男子しか知らない勢いだよね。 あと、藤波宗汰 」
「語尾に怒りマークが付いてる〜。 そうだなぁ……同じクラスでも、ほとんど喋ったことない人ばっかり。 名前も、数人うろ覚えかも 」
「結奈ちゃん、それ自慢にならないよ〜。 その男子もお気の毒だな 」
半ば呆れたような声で、比茉里ちゃんは笑っていた。
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