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「結奈ちゃんに避けられてるってしょげてたから、理由は知らないけどちゃんと話してやってねー 」
そう笑って、下津くんは涙を流すジェスチャーをした。
あんな風に逃げ出してしまった後、さらにバレッタを紛失して合わせる顔がない。
どんな顔をして話したらいいんだろう。
湊くんが気にしていると知って、軽率な行動をしたと申し訳なく思えて来た。
「湊くんって、美術室にいるかな 」
「部活だろーし、いると思うけど 」
「ありがとう。 ちょっと行ってきます 」
下津くんが小さく手を振る姿を見てすぐに、小走りで美術室へ向かった。
駆け足で階段を上がっていると、突如、上の階から駆け下りて来た人が視界に入った。
危ないと思った瞬間にはぶつかっていて、その反動で互いに尻餅をついた。
「すみませんっ! 」
慌てて体を起こして、その人を見る。
不服そうな表情で、瀬崎さんがゆっくりと腰を上げた。
スカートを払いながら、彼女はぷんっとした態度で私を見る。
彼女の足元には、昼間に見たバレッタが落ちていた。
それはどう見ても、私の物と同じに見えた。
たまたま、同じ物を持っていたのかもしれない。
とりあえず確かめたくて、バレッタを拾おうと手を伸ばした。
すると、私より先に、長い指がスッとそれを拾い上げた。
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