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落ちる!逃げなければ、と思った瞬間には、誰かに脇を抱えられるように後方へと倒れ込んでいた。
それとほぼ同時に、屋根の一部が、目の前の地面に叩きつけられるように落下した。
私の顔は一瞬で青ざめ、今起こったことに対して身震いを感じた。
誰かに抱き抱えられていることを思い出して、私はすぐに体を上げた。
「間に合った…… 」
そう荒い息遣いで、私を支えてくれていたのは湊くんだった。
彼は少し顔を歪めてら左肘を触った。
「湊くん、もしかして怪我したの?! 大丈夫?! 」
彼の腕に触ると、七部丈にまくられたジャージから覗く膝に、血が滲んでいるのが見えた。
「擦り傷だよ。 それより、結奈ちゃんは怪我ない? 」
そう微笑んだ湊くんを見て、何故か胸が切なくなった。
彼は私の手を包み込むように取ると、ゆっくりと立ち上がらせてくれた。
「結奈ちゃん、足が切れて…… 」
「湊くんは、どうしてそんなに王子さまなの? 」
彼の言葉に被せるように、私は心の声を出していた。
彼は少し戸惑ったような表情で、なんと答えていいのかと言うように目を空へ向けた。
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