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開演間近の体育館。
まだ明るい会場は、既に多くの人で賑わっている。
今年は吹奏楽部とのコラボと言うこともあり、例年より注目を浴びているようだ。
中に入りかけると、劇開始のアナウンスが流れ始めて体育館のカーテンが閉められた。
私たちは素早く後方の端の席に座わる。
その後からも、まだ少し人が入って来た。
近くに座っている女子が、湊くんと私を見て、「あっ」という顔をする。
「内緒ね」と言うように、彼は人差し指を自分の口元に当てた。
ふと前方に周りを見渡す瀬崎さんの姿が見えた気がして、私の心臓は跳ね上がった。
その隣には、明智さんと下津くんが立っている様子も薄っすらと見える。
明智さんと目が合った気がして、私は思わず目を逸らした。
湊くんといる所を見られてしまった。
瀬崎さんがプリプリと怒りながら、こっちへ来る姿が想像出来た。
再び彼女たちに視線を向けると、みんなはステージを向いて座っていた。
瀬崎さんには、少し申し訳ない気持ちもあったけど、今は自分の気持ちを大切にしたいと思った。
「こんな暗くなるなんて、本格的だね。 ちょっと緊張してこない? 」
「どうして湊くんが緊張するの? 」
クスッと笑って彼を見ると、暗闇で僅かなステージライトに照らされた彼の表情が、とても色っぽく見えた。
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