125人が本棚に入れています
本棚に追加
/227ページ
この人のペースに付いていけない。
息をゆっくり吸って吐いて、私はなんとか胸を落ち着かせた。
「血の気の無いような、爽やかな顔してるけどさぁ……アイツも普通の男だからね。 頭の中は、分かんないよー? 」
下津くんは、不適な笑みを浮かべて、シャーペンを指で回した。
「星名くんは、そんな人じゃないです。 そうゆうこと……言わないで下さい 」
段々と声が小さくなっていく。
またムキになって、言い返してしまった。
男の子を相手に、こんな態度を取ったのは初めてだった。
私は、何を必死になっているんだろう。
「ふーん。 まあ、湊のこと買い被るのは自由だけど。 結奈ちゃんてさぁ、知り合ったばっかりでしょ? まだ、アイツの10分の1も知らないと思うけど 」
悪魔は、穏やかにほくそ笑む。
それ以上、言葉が出なかった。
確かに、私より下津くんの方が何倍も星名くんのことを知ってる。
「率直に聞くけどさぁ、結奈ちゃんって湊のこと好きなの? 」
先程までのふざけた感じとは打って変わり、彼は真顔になった。
その真剣な眼差しが、妙に怖く感じた。
星名くんは、素敵だと思う。
もっと知りたいとも思う。
これが好きという気持ちなのかは、まだ分からない。
でも、とりあえず……
「星名くんと、友達に……なりたい 」
波打つ胸を鎮ませながら、震えそうな声を振り絞った。
これが、今の私の精一杯。
狐につままれたような、ぽかんとした顔で私を見ると、下津くんはフッと笑みを浮かべた。
「だってさ、湊くん 」
焦って後ろを振り返ると、トイレから戻って来た星名くんが立っていた。
最初のコメントを投稿しよう!