episode.3 不敵な嫉妬

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結果発表が終わり、私たちは実技室を後にした。 会場の扉前でみんなと別れ、なんとなく湊くんのココアトーク画面を開く。 既読は付いていたが、返事はなかった。 お姉ちゃんに用件を打つと、私は階段を降りて正面入り口へ向かった。 「結奈ちゃん 」 門を出た時、後方から聞き覚えのある心地良い声が聞こえて、私は足を止めた。 そんなはずはないと思いながら、胸をドキドキとさせながら振り返る。 目の前に、私服姿の湊くんが立っていた。 七部に(まく)られた白シャツに、細身のデニムズボン。 膝をついて、拝みたいくらいに神々(こうごう)しい。 「なんでここに、星……えっと、湊くんが?! 」 ここがコンテスト会場だと、湊くんは知らないはずだ。 それなのに、どうして私には彼の姿が見えているんだろう。 幻想あるいは幻覚か、脳は正常に作動していなかった。 「ちょうど、こっち方面に用事で来てて。 たまたま通りかかったら、『スイーツコンテスト会場』って看板出てたから、もしかしたらと思って 」 あぁ、神様。 こんなドラマのような偶然があって、良いのでしょうか。 感激のあまり、言葉が出ない。 「お疲れさま。 ちょうど今〝ココア〟見たから返事出来てなくて、ごめんね。 ケーキ、すごく可愛かった 」 湊くんは、白い歯を見せて柔かな目をした。 胸の中がキュンと狭くなって、ギュッと苦しくなる。 好きという感情が、溢れ出る瞬間を知った。 会場から出てきた他校の生徒たちが、私たちを横目でチラチラと見ていた。 その中には、優勝した高校の生徒もいた。 「……コンテスト、ダメでした。 グランプリは無理でも、もしかしたら特別賞ならって……ちょっと期待したんだけど、入賞は出来なかった 」 目の前が、霞んで見えた。 一瞬、暗い空気が流れて、ふと脳裏に下津くんの言葉が蘇る。 ーー暗い顔してる子と一緒にいたいかって聞かれたら、俺ならノーだね。 面倒くさいから。 こんな辛気臭い顔をしてたらいけない。 ジンクス関係なく、嫌われてしまうかもしれない。
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