episode.4 秘密の勉強会

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下津くんも、苦労していたんだ。 有名な人の家族って、私たちが思うより、すごく大変なのかもしれない。 「でも、下津くんは幸せ者だね 」 「どうしてそう思うの? 」 湊くんが不思議そうに首を傾げると、私は真っ直ぐに彼を見つめた。 「だって、湊くんに出会えたんだもん。 友達思いで優しくて、こんな天使みたいな…… 」 言いかけた言葉を飲み込んで、私は口を(つぐ)んだ。 また、無意識にやらかしてしまった。 穴を掘れるならば、この場で穴に入りたい。 「ありがとう。 結奈ちゃんにそう言ってもらえて、嬉しいよ 」 笑顔が、少しぎこちなく見えた。 ーーみんなが知らない、別の顔があるかもね。 なぜか今、比茉里ちゃんの言葉が脳裏に蘇り、私の胸の音を(あお)った。 ドアが開いて、ようやくケーキを持った2人が戻ってきた。 白い長方形のお洒落な皿に、チョコレート・モンブラン・苺タルト・チーズケーキが色取り取りに並んでいる。 「お腹減ったし、みんなご飯食べよー♪ あと、この弁当は下津くんの(おご)りなので 」 楽しそうな比茉里ちゃんの声を横に、私はどこかおぼつかない気持ちだった。 胸騒ぎとは、こうゆうことを言うのかもしれない。 「奢りって、これ全部? ちゃんと私も払うよ 」 その気配を掻き消そうと、私は慌てて鞄から財布を取り出そうとする。 それを、湊くんの手が阻止する。 私の手の上に、彼の手がそっと重ねられた。 ピクッと肩が跳ね、頭の中が真っ白になる。 「僕も出すから、結奈ちゃん達はいいよ。 樹も、女の子から貰うつもりないと思うから 」 「私も、払うって言ったんだけどね。 下津くんが、いいって一点張りだったから 」 「じゃあ、お言葉に甘えてありがとう 」 彼の指が離れた後も、まだ温もりが残っていた。 ギュッと手のひらで(おお)い、私は視線を前へ向けた。
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