一時間目

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一時間目

“キーンコーンカーンコーン” 「起立、気を付け、礼! おはようございます!」 「「おはようございまーす!!」」 「出席とるよー。スケルトンくん」 「はーい。元気です!」 「今日も骨太で調子よさそうだね。サラマンダーくん。」 「ヴォフォー!」 「こら、教室で火を吹かない。サキュパスちゃん」 「はーい、先生大好き💛」 「朝から先生を誘惑しようとしない! ケルベロスくん」 「ワン、わん、おようございます。」 「なんで三つの顔のうち一人だけ喋れるんだろね? デュラハンちゃん。」 “はーい” 「どうしたんだ?ホワイトボードに“はーい”って書いて…?」 “家に頭忘れてきました” 「もう、明日から気を付けてね。オーガくん。」 「うーい。」 「ちゃんと返事しなさい。もう一回オーガくん。」 「……はーい。」 「最初からちゃんと返事しなさい。ヴァンパイアちゃん」 「ん、はーい💛」 「こら、ケットシ―に咬みつかない。スライムちゃん。」 「ふぁーい。」 「なんだスライムちゃんは寝不足か? ケットシーくん。」 「先生! こいつずっと血吸ってくる!」 「こら、いい加減にしなさい、ヴァンパイアちゃん。」 「っん、ごめんなさい……。」 「みんなも本能抑えるのは大変だと思うけど、人間界で生活したいのなら、ちゃんと人に迷惑かけないようにしないと駄目です。わかった?」 「「はーい!!」」 「えっと、次はゴーレムくん。」 「ゴワス!」 「うーん、まぁいいか。シルキーちゃん」 「はーい。」 「窓拭いてくれるのはいいけど、今は掃除の時間じゃないよ。ゾンビくん。」 「ヴァーイ゛!!」 「大丈夫……? 体調わるかったらすぐいいなよ? アラクネちゃん。」 「「今日お休みでーす!」」 「おっ、今日は欠席か……。」 「脱皮する時期だって言ってました。」 「おぉ、そうか。ドラゴンくん。あれ? 今日も遅刻か?」 「先生! ドラゴンくんが窓叩いてます。」 “ガラッ” 「こらっ、寝坊したからって窓から入ろうとしない! ちゃんと門から回って来なさい。」 「すみませーん。」 「セイレーンちゃん。」 「はーい♪」 「今日も綺麗な声だね。ゴーストちゃん。」 「は…い……」 「今日も存在感薄いね。はーい、アラクネちゃん以外全員出席だね。朝の歌うたうよー。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  20xx年、どこぞの勇者が魔王を倒して、世界は平和になったと思われた。  しかし、魔王亡き後、大きな社会問題が発生した。それは魔王の部下であったモンスターたちと人間たちの共生である。初めはモンスター差別を行う人たちも見られたが、その運動は沈静化し、今は人間とモンスターたちが共に人間界で生活できるように、モンスター専用の学校なるものが存在するようになった。  私は今、このモンスター専門の学校でクラス担任をしている。モンスターたちに、国語、算数、理科、社会、体育、音楽、図工、家庭科、道徳を教え、人間と共生できるように指導していく。とはいっても、基本的には社会と、道徳が基本となる。人間と上手く生活していくために、最も重要なのはこの二教科だ。 「先生! 一時間目なにやんの?」  ケットシーがぴょんぴょん跳ねながら質問してきた。 「一時間目は、買い物の仕方について教えるよ。みんなこの建物は知ってるかい?」 「「スーパーマーケット!」」 「よく知ってるね。では、ここでは何が売ってるでしょう。」 「肉!」 「魚!」 「人!」 「おい、誰だ今人って言ったのは? スーパーで人身売買はしていないよ。」 「先生はいくらで買えるの?💛」  サキュパスが妙に色っぽい声で質問した。 「先生はいくらでも買えません。そもそも先生なんて買ってどうするんだ。」 「えっ、性奴隷とか?」 「こら、そんな言葉を使ってはいけません!」 「ちょっと何言ってんのサキュパスちゃん。先生は私が買って、眷属にするんだよ。」  ヴァンパイアちゃんとサキュパスちゃんは言い合いを始めてしまった。 「ちょっと、先生はみんなのものだよ。」  シルキーちゃんが慌てて止めに入る。 「いいこと言ったね、シルキーちゃん。先生は誰のものでもありません。そもそも生きているものは誰かのものではありません。」 「えっ、でもゴーストちゃんやゾンビくんは死んでね?」  調子者のオーガが、私の発言の上げ足をとってきた。 「こら、そういうことを言うんじゃありません。生きてるってのは、色んな意味があるんだ。ゴーストちゃんも、ゾンビくんもちゃんと生命ある存在だよ。」 「ぼぐぅヴぁぢゃんどいぎでどぅよ゛お゛!」  全然ゾンビくんが何を言ったのか聞き取れなかった。 「えっ、ゾンビくん……ごめん、なんて言った?」 「僕はちゃんと生きてるってさ。」  近くに座っていたケットシーが通訳してくれた。 「ゴーストちゃんはどうなんだよ? 死んでるじゃん!」  オーガがまた余計なことを言った。反抗期なのか本当に困ったやつだ。 「……う゛っ、ううぅ…。」 「あーあ、ゴーストちゃんなーかした!」  ゴーストちゃんは、オーガの言葉に泣き出してしまった。サキュパスちゃんがオーガを非難するように囃し立てる。 「こらこら、もうみんな余計なことを言うな。生物的な定義では、確かにゴーストちゃんは死んだ人の霊という存在だ。しかし、生命ってものはもっといろんな概念がある。」  私はオーガの机から彼の筆箱を手に取った。 「オーガくん、この筆箱は生きているかい?」 「……生きてるわけないじゃん。」  オーガは決まりが悪そうにそう言った。 「そうだな。っじゃあ、生きていないこの筆箱と、君が死んでいるといったゴーストちゃんは、同じかな?」  私の問いに、オーガは黙りこんでしまった。先ほどまで憎たらしい表情だったオーガも、その大きな目に涙を溜め込み始めている。 「「ちがうー!!」」 「「ゴーストちゃんも生きてる!」」  オーガの代わりに、クラスの面々が正義を振りかざすように答えた。 「ゴーストちゃんは、君の発言に少し嫌な思いをしてしまったようだよ。オーガくんはどうしたい……?」 「……ごめんなさい。ゴーストちゃん。」  オーガはゴーストちゃんへの謝罪の言葉を、震える声で振り絞るように言った。 「よく言えたね。ゴーストちゃん、許してあげられるかな?」  私の問いに、ゴーストちゃんはコクんっと頭を縦に振った。 「えらいね……。先生は、これまで色んな人間を見てきたけど、同じ人間ですらたくさん違うところがある。人とモンスターだったらなおさらだね。それを一々違うところ全部を、お前はここが違うなんて口にしていたらきりがないじゃないか。」  私の言葉を、クラスのモンスターたちは静かに聞いていた。 「だから、誰かと出会った時に、あぁ自分と違うところがあるなぁ……って思った時、どうしたらいいと思う?」 「「黙って言わないでおく。」」 「「いちいち口に出さない!」」  クラスの面々からはそんな言葉が出てきた。しかし、ドラゴンくんが反論を唱えた。 「でもっ、どうしても自分と違うところが嫌だったらどうすんだ?」 「なるほど……例えば?」 「ほら、そこでまたヴァンパイアちゃんが、ケットシーの腕に咬みつこうとしてるぜ。」  ドラゴンが指さした先を見ると、ヴァンパイアちゃんがケットシーの腕に咬みつこうとしていた。 「こらっ、給食の時間まで我慢しなさい!」 「いやっ、給食の時間でも駄目だよ!」  私の指導に対し、ケットシーは涙目で非難した。 「すまんすまん。ドラゴンくんの意見はいい指摘だね。」  普段は少し問題行動も多いドラゴンくんだが、私に褒められて、嬉し恥ずかしそうな表情になった。 「ドラゴンくんが言った通り、何でも黙っていればいいというわけではないね。多様性を認めるのは大事だけれど、でもどうしても嫌だったり、他の人に迷惑をかけているなら、それは注意してあげることも大切だね。」  モンスターたちには少し難しい話だったかもしれない。しかし、多様性を認めあうことや、上手く思いを相手に伝えることは、これから人間たちと生活していくうえでも大切なことだ。 「みんなわかった?」 「「はーい!!」」  教師が「みんなわかった?」という台詞を使うときは、生徒が本当にわかったのか自信がない時か、次の話題に進めたいときだ。この時の私は両方の気持ちでこの言葉を使った。 「っじゃあ、買い物の話に戻りますよ。」  黒板に貼ったスーパーの写真を指差し、モンスター達に尋ねた。 「この中で、お買い物いったことがあるよっていう人?」  18匹のモンスターのうち、ぱらぱらと10匹ほどが手をあげた。 「何買ったか覚えてる? ケットシーくん。」 「キャットフード!」 「えっ、ケットシーくんはキャットフード食べるんだ……。他のみんなはどうだろう? っじゃあセイレーンちゃん。」 「私はのど飴を買いました。」 「さすが、セイレーンちゃんは喉のケアに余念がないね。おっ、サキュパスちゃんは?」 「ゴムっ!」 「……そうか、風船買ったんだね。」 「違うよ、コンド……」 「はいっ! 他買い物した人は!?」 「先生が最後まで言わせてくれないっ!」  不服そうにサキュパスちゃんは頬を膨らませた。 「お店でほしい物を見つけたら、どうしますか? はい、スライムちゃん。」 「ふぁーい、他のやつにとられる前に捕食します。」 「違います。」  ケルベロスくんが発表したそうに、尻尾をちぎれんばかりに振っている。 「はい、ケルベロスくん。」 「わん、ワン、マーキングします。」 「駄目です。ケルベロスくん、絶対駄目です。欲しい物を見つけたら、買い物カゴに入れるんですよ。そしてレジに持って行きます。」 「レジって何でゴワスか?」 「ゴーレムくん、レジもしらないの? 人間たちが機械でピッってするところだよ。」 「ピッ、でゴワスか。」 「そうだね、機械で品物の値段を調べるんだよ。」 「値段というと、そのものの価値を調べるってことか?」 「その通りだよ、ドラゴンくん。」 「っじゃあ、俺をピってしたら、すごい数値が出るのか?」 「いやいや、お店で売っているものが何円かを調べるんだ。みんなお金はもってるかい?」 「あれか、旅人を襲ったらドロップするやつだろ。」 「オーガくん、旅人を襲ってはいけません。お金は働いて得るのです。お金と品物を交換して、欲しいものをゲットします。」 “キーンコーンカーンコーン” 「おや、もう終わりですね。休み時間でーす。」 「「ガヤガヤガヤ」」 「こらー、廊下を走るなよー。……ケルベロスくん、教室で自分の尻尾を追いかけない。お外いっといで。あと、誰か宿題出てないぞー、オーガくん出したかい?」 「今日はちゃんと出したって!」 「あれ、そうか。すまんすまん。」 「ずんま゛セ゛ん゛!」 「あぁ、ゾンビくんか。ちゃんと朝忘れずに宿題出しなよー。あれ、ゾンビくん腕はどこだい?」 「ヴぁあ゛?」 「先生! ゴミ箱にゾンビくんの腕落ちてるー!」 「なんだってっ……!?」 “キーンコーンカーンコーン” 「先生、二時間目はー?」 「その前に先生から話があります。さっきの休み時間、ゾンビくんの大切な腕が、ゴミ箱の中から見つかりました。誰か心当たりがある人はいますか?」  教室の中は静まり返り、「おいっ、そんなことしたの誰だよ?」とオーガが余計なことを言って、犯人探しの雰囲気になった。 「……ごっ……ごめんなさいっ!」  その空気に耐え切れず声を出した主は、目に大粒の涙を浮かべたシルキーちゃんだった。 「えっ、シルキーちゃんだったの!?」 「あの真面目なシルキーちゃんが……。」  みな驚きの様子で、その場に起立したシルキーを見ている。 「てっきり、オーガかドラゴンくんあたりだと思ったー。」  ケットシーが余計なことを口にする。 「おい、オーガくん、あとで一緒に塵にしようぜ。このくそ猫。」 「おっけー、ドラゴンくん。」 「えっ、ごめんってば……。先生、助けてよ。」 「余計なことを言った君が悪い。自業自得だね。」 「そんなぁ……」 「それより、シルキーちゃんは何か理由があるんじゃない? 先生は君が理由もなくこんなことをするとは思えないんだけど。」 「……。うっ、うぐっ。ごめんなさい。休み時間に廊下掃除してて……なんか汚いゴミみたいなのが落ちていたから……一緒に捨てちゃった……。」 「あ……そうなのね……。悪気はなかったみたいだけど、ゾンビ君……どうする?」 「ゆ゛る゛ずっ!!!」 「えっ、なんて?」 「ゆるすだってさ。」 「そうか、ゾンビくんもいい子だね。ただし、ゾンビ君も腐ってるからちぎれやすいのは分かるけど、大事な物はちゃんと自分で管理することも大事だよ。」 「ヴァーイ゛!!」 「シルキーちゃんも座っていいよ。っじゃあ、勉強始めるよー。」 「次は図工ですね。」 「そうだよ、スケルトン君。今日は、似顔絵を描いてもらいます。」 「「えーっ!」」 「「やったー!」」 「はいはい、一々騒がない。ただし、今回は自分の顔じゃなくて、友達の顔を描きますよ。隣同士、ペアで向かい合ってお互いの顔を描いていきましょう。」 「先生!」 「どうした、ヴァンパイアちゃん。」 「ゴーストちゃんの色が透けてるけど、どんな色使ったらいいのー?」 「うーん……、白?」 「画用紙の色が白なんだけど……。」 「っじゃあ、黒の画用紙あげるから、それで描くかい?」 「うん! そうするー。」 「せんせーい!」 「何だーい?」 「アラクネちゃんお休みだからどうしたらいいの?」 「あー、スケルトンくんは……、デュラハンちゃんとサラマンダーくんと一緒に三人でお互いの顔を描こうか。」  それぞれ筆を走らせるモンスター達の様子を机間巡視する。 「ゴーレムくん、上手いじゃないか。」 「ありがとうでゴワス。」 「ねぇねぇ、デュラハンちゃんもめっちゃ絵うまいよ!」 「おっ、サラマンダーくんが火を吐いてるところだね。」 「先生、見てみてー。」 「うん? サキュパスちゃん……なにこれ?」 「先生と私がくんずほぐれつしてるところを描いたよー。」 「ちゃんと、友達のことを描きなさい。」 「せんせーい、オーガくんが全然描いてくれない。」 「何してんのオーガくん、どうしてちゃんと描かないの?」  私の問いに、ケットシーがまた余計なことを言った。 「照れてんじゃない? オーガくん、シルキーちゃんのこと好きなんじゃないの?」 「ちっ! ちげぇよ! 表出ろや、保健所送りにしてやるよっ!」 「わん! ワン! なんてことを言うんだ!」 「いやっ、ごめん。ケルベロスくんに言ったんじゃないよ。そこの糞ネコにだよ。」 「こら! 喧嘩をしない! いいからちゃんと集中して描きなさい。」 「先生!」 「今度はどうした、サラマンダーくん?」 「スライムちゃんが、絵の具こぼして身体に色が混ざっちゃってます。」 「うわぁ、スライムちゃん虹色になってるじゃないか。これはこれで綺麗だけど……。あとで保健室行ってきなさい。」 “キーンコーンカーンコーン” 「はーい、次の時間も続きするから、机の上はそのままで休み時間ね。こら、ケルベロスくん。スケルトンくんの骨を齧らない。」 「わん、ワン、すんません。」 ~給食の時間~ 「はーい、給食当番早く並びなさーい。スライムちゃん、ぼーっとしてないで早く着替えなさい。」 「出発するよー。あれ、オーガくんは?」 「まだシルキーちゃんの絵描いてます。」 「こらー、シルキーちゃんをいつまでも見つめてたい気持ちはわかるけど、もう終わりだよ。早く並びなさい!」 「そ、そんなんじゃねぇしっ!」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「手を合わせましょう。」 “ぱちんっ” 「いただきます。」 「「いただきまーす。」」 「先生! なんで人間はご飯食べる前にいただきます! って言うの?」 「あぁ、それはね。作ってくれた人への感謝がまず一つだね。あとは命をいただきますって意味で、これも食材への感謝だよ。」 「そうなんだー。あっ、先生うしろ。」 「いただきまーす💛」  振り向くと、サキュパスちゃんが後ろから私に襲い掛かろうとしていた。 「おい、それは違う意味のいただきますだろ。席に座りなさい、サキュパスちゃん。」 「ちぇー。」 「先生!」 「はい? どうしたスケルトンくん。」 「ヴァンパイアちゃんが血を飲んでるときに、ケットシーくんが笑かして拭きだしちゃいました。」  見ると、ヴァンパイアちゃんの正面に座るケットシーが血まみれになっていた。 「あーあ、血だらけじゃないか。ケットシ―くん……。自業自得だよ。保健室いっておいで。あっ、シルキーちゃん拭かなくていいから、先生がやるよ。ありがとうね……。」 「先生!」 「なんだい? ドラゴンくん。」 「おかわりしたい!」 「みんなの分も残しときなよー!」 「あっ、先生! ドラゴンくんめっちゃいっぱいおかわりしてるよー。」 「あぁ、もう先生が配るわ。おかわりしたい人挙手! はい、一列に並ぶ。サラマンダーくん走らない!」 「先生! オーガくんが順番抜かしてきたー!」 「もう、みんな同じ量だから順番は関係ありません!」  自分の給食を食べる暇すらないというのは、人間の小学校の教師だったときも同じである。私は魔王が倒されるまでは、人間の小学校の教師として働いていた。 「先生って大変ですね。お疲れ様です。」  おかわりを配り終り、やっと自分の食事にありつこうとしたとき、既に食べ終わったシルキーちゃんが話しかけてきた。 「あぁ、気遣ってくれてありがとう。シルキーちゃんはおかわりいらないかい?」 「はい。私はもうお腹いっぱいです。……今日はごめんなさいでした。」 「えっ、どうしたんだい?」 「ゾンビくんの腕の件、騒ぎになってしまって。」 「そんなの、もう気にしなくていいよ。シルキーちゃんは真面目だから、気にし過ぎちゃうのかもしれないけど……、誰だって間違えることはあるんだ。先生だって間違えてばっかりだよ。」 「えっ、そうなんですか?」 「あぁ、いつもいっぱい間違えている。でも、間違えて、何がよくなかったの反省する。ちゃんと反省したら、次からは気を付けるけど、そのことでもうくよくよ悩んだりしない。それでいいんだよ。いつも一生懸命がんばってる人が間違えたって、きっとその人は失敗から学ぶはずだ。シルキーちゃんもそうじゃないかな?」 「……はい、次からはちゃんと確認してから捨てます。」 「そうだね。それでもういいんだ。次はシルキーちゃんの一番大好きな掃除の時間だろ。シルキーちゃんの掃除の仕方はみんなのお手本になってるから、元気だして掃除頑張ろうね。」 「……はいっ! ありがとうございます。」  シルキーちゃんは笑顔に変わって、自分の席へと戻っていった。 “キーンコーンカーンコーン” 「あっ、給食の時間終わっちゃった……。」 「先生、全然食べてないじゃん! お残しだー。」 「はーい。まだ食べ終わってない人は先生と昼休み一緒に食べましょう。ごちそうさまするよー。」 「手を合わせて。」 “パチンッ” 「「ごちそうさまでしたー!」」 ~おまけ~ “キーンコーンカーンコーン” 「はーい、5時間目は英語の勉強ですよ。」 「先生! 英語ってなんの勉強するんですか?」 「場所によって、同じ人間でも違う言葉を使うことがあります。色んな言葉があるんですが、一番多くの人が使っている言葉が英語ですね。例えば、この数字を英語で言える人はいるかな?」  私の発問に、ケルベロスくんが発表したそうに尻尾を全力で振っている。手を挙げられないケルベロスくんは、尻尾ふるときが手を挙げている合図だ。 「はい、ケルベロスくん。」 「わん、ワン、one!」 「おっ、よく知ってるねケルベロスくん。oneは1って意味だね。」 「はい、では英語の授業を終わります。」 「「えっ!?」」 「先生、これがしたかっただけじゃない……?」 「はーい。早く帰る用意しなさい。帰りの会始めちゃうよー。」 「起立、気を付け、礼!」 「「ありがとうございました!!」」                              完
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