Ⅰ.

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Ⅰ.

 濁流でごった返す人の流れは、有象無象。  そんな中で、同系にして同型の人間同士を消す。  それが私の持つ特殊能力だ。  私の名は──そうだな、JOKERとでも呼んでもらおうか。  大都市のスクランブル交差点。信号が青になり、有象無象どもがすれ違う。  ある若いカップルの男の方が、彼女の方を見て──。 『あーあ、もうちょっと可愛い彼女だったらなぁ』  笑顔で彼女の相づちを打ちながら、そんなことを考えていた。  私は周囲を見回し、片手の親指と人差し指で輪っかを作り、別の群衆を“スコープ”する。  探す。  探す。  すると──。 『あーあ、この子よく見るとブスだな。もっと可愛い彼女つくろ』  いた。  彼女と笑顔で接しながら、心の中ではそんなことを考えている男。  すれ違いざまに相まみえる、カップルAとカップルB。  私は、まるでスマホ画面をタップするように二人をピッ、ピッと指差してみる。  その瞬間──。  パシュッ。  男と男が、跡形もなく消えた。  私は、同系にして同型の人間同士──つまり、同じ思考や嗜好を持つ同じもの同士を消すことができる。  そう、まるでドッペルゲンガーのような現象を引き起こすのだ。
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