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マジで世の中で一番イヤな日12月24日が、やってきやがった。
俗にいう、クリスマスイブ、聖夜ってやつだ。
日雇派遣で食いつなぐオレ「九頭龍地」(くず・りゅうじ)にとって、街が華やかで幸せそうなムードで包まれるのは許容範囲だが、オレの唯一の立ち寄り場所であるコンビニでさえ、お祭りムード一色になるのは、心底、吐き気がする。
「明日の生活すら分かんねー底辺のオレが、有名パティシエのブッシュドノエルだの、何とかランドのホテルで女とお泊りセックスするだの、関係ねえだろうが。何が聖夜だよ。性夜の間違いだろうがよ、クソが」
薄っぺらく湿っぽい布団からようやく抜け出し、洗面所で胸糞悪いまま、「ベッ」と唾を吐きだした。
「大体、キリストの誕生日に仕込むのなら、聖夜は二月が妥当だろ? 世間の連中は、そんな単純なことも分かんねえのかよ」
などとボヤキながら、市川の六畳一間の築不明のくっそボロい木造アパートを出た。
オレは歩いて15分の最寄りの南行徳駅を目指し、うつむいて誰とも顔を合わせないように風を切っている。
「今こんなだが、必ずビッグになってやる」
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