にちじょうのあいさつ

1/1
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ

にちじょうのあいさつ

今年3月 受験の日 「この学校はとっても楽しいから頑張って!                 待ってるから」 --------------------------------------------------------------------- 「しお~!今日は部活?」 「そうだよ」 「いやー、弓道なんてすごいよねー。あたしじゃ到底ムリだわ」 「そんなことないよー。レイちゃんもやってみたらいいのに」 「遠慮しときますわ」 そんな日常の他愛もない会話がまた楽しいってやつですよね。 立花紫音 17歳 高校二年生 弓道部 こちらは立木麗華 きれいな癖に男勝りの大親友 「しお。そろそろ定期便の時間じゃない?」 「定期便って何よ」 「なにって、あんた・・・・」 「しおせんぱーい!こんにちはー!これから部活ですかー!!」 部活前に毎日挨拶をしてくるコイツ。田中拓哉。バスケ部らしい。 どうやらあたしはコイツに気に入られてるらしい。 理由はよくわからないけど。 「今度バスケ部見に来てくださいよー」 「ああ、はいはい。時間があったらね」 社交辞令 「おおーい!タク!部活行くぞ!まったく」 ナイス!小日向くん。 「毎回頑張るねー。彼」 「まったく、なんなんだか」 「おかげで名前、憶えられたじゃん」 レイちゃんの含み笑い。何考えてんだか。 「べつにそんなのどうでもいいじゃん。もう行くね」 「同じ拓哉なのにぜんぜん違うよねー」 「なに?例のかわいい後輩、まだ探してんの?」 「そういうわけじゃないけどさ。受験票落として沈んでたし、行く末が心配じゃない」 今年の3月、近くの公園で受験票を拾った。幸いうちの高校だった。 受験当日、生徒は中に入れないから校門の前で写真の男の子をひたすら探した。 眼鏡に学生服。見た目はどこにでもいる普通の中学生って感じ。 「あ・・・あの子だ!間違いない」 うつむき加減で歩いてくる男の子。校門を入る前に呼び止める。 「三枝拓哉君?」 「はい・・・」 「受験票拾ったの。はい!」 「・・・・・」 「この学校、とっても楽しいから頑張って!待ってるから」 元気づけてあげようと思ってかけた言葉。 新学期が始まって彼らしい姿は見かけない。 三枝なんて珍しい苗字もいないらしい。 だめだったのかな?それとも違う学校に行っちゃったのかな。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!