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「と、御紹介した週刊文龍でも大変批判的に書かれている『不貞防止法』ですが、世間の風当たりも相当強いみたいですね。実際、若者を中心としたアンケートの結果を見ても、『不防法』制定後は結婚に消極的になったという回答が目立っています。私の周りでも結婚を控えているという知り合いは多いです。結婚率の激減は、数字だけでなく実感としてもヒシヒシと肌に感じています。しかし、問題は結婚率の激減だけではありません。犯罪数の激増も社会問題になっています。鈴木さん、元警視正というお立場から、現在の犯罪数について、どうお考えですか?」
「はい。結局、政府は新しい犯罪を作っただけなんですね。新しい刑事法を作るっていうのはそういう事なんです。だから殊更に慎重にならないといけないんですね。今迄は民事で済んでいた浮気が警察の管轄に代わった訳ですから、これは、まぁ、単純な足し算ですな。昔から浮気はいけない事ですから、倫理的には大して変わらないんですが、これが犯罪に数えられる訳ですから、犯罪数が増えるのは当たり前でしょう。で、犯罪数が増えた事による弊害ですが、当面の課題は先ず捜査員不足でしょう。浮気が刑事事件になってしまったので、家庭の問題にも警察官が駆り出される。一番の問題はこれです。何より捜査員の数が足りない。警察が浮気調査にかまけている間に、凶悪事件が発生したら、対処する人間がいないんですからね」
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