エピローグ

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「切り離し十秒前!!」 CAPCOMの弥生の声が無線から響く。 真理は和也と繋いだ左手を外し、そのままセンタークラスターの推力(スラスト)レバーを握った。右手はサイドステックを握りしめる。 「五、三、一、切り離し(セパレーション)!」 『ペガサス2』の機体上部と『スペースデルタ』下面の接続機構が油圧で開き、全長三十五メートルの『ペガサス2』が空中に解き放された。 その瞬間、真理は急激な重力加速度の減少を感じた。身体がシートから浮く。 真理は左手で推力(スラスト)レバーを握り直した。 「それではメインエンジンを点火します! 三、二、一、マーク!」 真理は推力(スラスト)レバーを一杯に前に押し込んだ。 その瞬間『ドン!』という激しい音と共に『ペガサス2』に搭載された十二機のF1エンジンが点火された。 『ペガサス2』の後方に巨大な火炎が噴出される。その後ろに長い真っ白な雲を引きながら『ペガサス2』が素晴らしい加速に入った。 真理の背中がシートに押し付けられる。物凄い加速度だ。身体を動かすのが辛い。でも充分訓練した加速度の範囲だ。 「速度、マッハ〇.七八、八二。降下から上昇ステージへ」 真理の耳に和也の声が聞こえる。真理は頷きながら、サイドステックをゆっくり引いて『ペガサス2』の機首を更に上に向ける。 「機首ピッチ五十二度、加速度三.八G。速度マッハ一.三、高度九万八千フィート」 和也の声に頷きながら、真理は『ペガサス2』のウィンドシールドの外を見上げた。そこには真っ黒な宇宙空間が広がり昼間なのに星の瞬きが見えるとても幻想的な光景だ。 「わぁー、綺麗!」 真理の頬を涙が流れる。 友也から貰った心臓が鼓動を早めている。 そして真理はもう一度大きく頷いた。 「友也・・。貴方から貰った命で・・私達、貴方の想いを実現させるね・・。まずは火星へ・・。そしてその次はね・・」 『ペガサス2』は地球の大気圏を抜けて真っ直ぐに宇宙を目指している。 友也から『受け継いだ想い』を(たずさ)えた二人の宇宙飛行士(アストロノーツ)を乗せて。 FIN
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