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ある日、友也が突然聞いて来た。
「真理の心臓は手術で治るんだろう? いつ手術の予定なんだ?」
私は空を見上げながら少し考えて、友也を真っ直ぐに見つめた。
「まずは人工心臓の埋め込み手術があって、それが成功すれば退院できるかもしれない。でも本当に普通に暮らすには心臓移植が必要なの。でもドナー登録はしてるけど、まだ順番は回ってこないみたい」
「そうか。俺の手術の日、決まったんだ。三日後」
驚いて彼を見つめた……。
(そうか。手術が終わったら友也は退院しちゃうのね……)
私は一生懸命泣かない様に友也に笑顔を向けた。
「良かったね。手術が終わったら学校に戻ってサッカー試合に出れるね。そして宇宙も目指せる。おめでとう!」
「そうでもないんだ……」
「えっ? どういうこと?」
「脳腫瘍が大きくなっていて、視神経だけでなく脳幹にも浸潤していて、結構、難しい手術になるんだって」
「えっ?」
「成功する確率は五分五分だって……」
「そんな……」
「でも、俺、必ず成功すると信じている。そして真理も手術が成功したら、俺とデートしてくれるかい?」
友也は真っ直ぐな瞳で私を見ている。
「あっ、えっ……もちろん……」
私は彼の手術の難しさを聞いて、そして突然のデートの誘いにパニックだった。
心臓が大きく高鳴る。でもそれは、私の心臓には耐えられない負荷だった。
急に左胸に鋭い痛みが走った。
急激に意識が遠のいて来る。
私は右手の緊急ボタンを押した。
「真理! 真理!」
友也の声が耳に響いていた。
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