五.

9/15

94人が本棚に入れています
本棚に追加
/156ページ
 視界の端で、三木さんが椅子を立て直しているのが見える。  表情は相変わらずいつものすました様子だけど、唇をかんでいるからどうしようかと思っているかもしれない。 「私は、眞王さんの許嫁で婚約者なんですよね」 「柚菜さん」  私が怒ったと知った眞王さんが、止めようとして立ち上がる。  もうだめだ。かりそめの許嫁関係とか、どうでもいい。私には私の人生がある。  眞王さんが、私が成人するのを待つ二十年間無駄にさせてしまったけど。
/156ページ

最初のコメントを投稿しよう!

94人が本棚に入れています
本棚に追加