六.

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 それでも、紫王さんの私の頭を撫でる手は、とても大事にされてるのが伝わるようなゆっくりしたスピードで、いつまででもそうしていてもらいたくなる。 「柚菜」  紫王さんの、眞王さんとは違う低い声が耳に響く。  わざと、私の耳に口元を近づけてるんだ。ずるい。  紫王さんは知ってるはず。私が、これまで23年のあいだ、眞王さんがいるからと恋愛をしてこなかったこと。  だから、こういうのに弱いってこと。ましてや、眞王さんだってしたことがないこと。
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