六.
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「……紫王さん」 思わず顔を上げた。 やめてと言おうとしたのに、距離の近さにその言葉はのみこむ。 かわりに、顔を離そうとしたけど、後頭部を押さえられて逃げられない。 何センチしか離れていない、という中で私と紫王さんの視線がからみあった。 ……こんなかっこよさで五十三歳は、まるで魔法でも使ってるかのようだ。
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