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三
「バキュームカーとクレーン車で、犯人のトリックを解明するばかりか、放置池の水まで綺麗にして地域に貢献するとは、うちのかずかずは毎回毎回、予想以上の働きをしてくれるわね」
警部の久留米稟は、かずかずが提出した報告書を眺めてそう感嘆した。
「犯人の山田という男は、村の運営に反対するものたちから、放置池に沈められている虐待を受けていました。その復讐に村の人間全てを抹殺する殺害計画を企てていたようです」
取り調べで山田から聞き出した動機を、かず子は報告する。
「本市さんは、その動機に疑問があるようですが」
和美は、本市から聞いた話をかず子に続いて説明する。
「疑問?」
「山田が殺害した被害者の遺体と、凶器が捨てられていた放置池は、村長の山田でも何が棲んでいるのか具体的にわからない池なんですが、今回のトリックはそれを分かった上でやっていると。何があるかわからない池の中の状態をあらかじめてわかったように、犯行していたのがひっかかると」
「池の中を覗かなくても、状態がわかる。そんな方法があると言うの?」
「船に付いている魚群探知機を使えば、魚影からその魚を特定することは可能です。ですが、事件現場の村には周辺に海がないので魚群探知機を買うひとはいない筈なんです。特別な理由がない限り」
「特別な、理由?」
「犯行の為に購入したのではないかと、本市さんは推測してます。しかし、船がないのに魚群探知機を買おうとする客に、売るお店があるとは思えませんが」
「じゃあ、犯罪の為に凶器を売るダークサイドの本市さんみたいな人がいるということ?」
稟は警視総監から預かったプリントを眺めながら、ため息をついた。
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