プロジェクトK

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 「お宝とか埋まってるかな?」  バキュームカーを降りたかず美が、放置池にやって来た。  「外来種のコイとか、ドンコとかならでかいのがいてもおかしくはないじゃろう。水清ければ魚住まず。これだけ濁っとりゃあ微生物や虫もたくさんおるはず。まるまると肥えたんがね」  「ペットショップが高値で引き取ってくれる?」  「村で起きた殺人事件をしらにゃあ、引き取ってくれると思うよ。生物調査した魚は、科捜研でレントゲンかけて、胃袋を見て貰おう」  「胃袋を?」  「コイやドンコは、歯がないけん、食べた餌が胃袋の中で原型をとどめちょることが多い。被害者のものが胃袋の中で消化されんまま残っとれば、それが証拠になる」  「要するに、コイが遺体のアカとか皮膚を食べて消したと言いたいの?」  かず美は、ピタリと足を止めた。  「じゃけ、さっき言うたろうがね。遺体と凶器は分別して欲しいって」  本市は、ズブズブと足音をたてながら、池の中の魚たちを浅いところへ追い込んでいく。陸に近い水場で黒い大きな魚が勢い跳ねるのが見えた。  「あれは、錦鯉っ! 燃えて来たぁ!」  かず子は、ぬかるみの中、歩くスピードを上げてまるまると肥えた池のヌシ、錦鯉に近付き、勢いよくしがみついた。体力に自身のあるかず子でも、ここまででっぷりと肥えた錦鯉の力には、百年分の重みをずしりと感じるほどだった。  「に、錦鯉っ! とったどぉ!」  釣り雑誌の表紙の釣りびとのように、かず子は錦鯉の尻尾をつかみ、本市たちに合図をする。  「その調子で集めて行こう。やれやれ、夏休みの宿題の手伝いが、まさか殺人事件の調査になるとはね」  作家はオフの日には、家族サービスという副業をして過ごしている。 読書感想文は、新作の小説をフライング・ゲットで読んで感想文がかけるほか、文章の書き方も同時に習えるので、作家を父親に持つ本市の娘、栞は苦労こそしなかったが、夏休みの自由研究に困った。 令和元年は自由研究が金で買える時代だが、本市では金では買わず、栞を田舎へ連れていくことにしたのだが、田舎で起こった殺人事件を解決して欲しいと依頼され、調査のためにバキュームカーを一台購入するはめになってしまった。
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