プロジェクトK

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 「和美さん、金属ゴミに紛れて、鯉が一匹クレーンに引き上げられているけれど、鯉もくっつくように改造したの?」  かず子は、和美が運転するクレーンの鉄板に鯉が張り付いているのを見て和美に訊ねた。  「してないよ。こう見えてもわたし、クレーンゲームは得意なんだよね。狙った景品は逃さないけど、余計なおまけは釣り上げない主義だよ。なんで鯉がクレーンにくっついて来たんだろう」  和美は、空中でクレーンの鉄板を止めた。  「そいつの腹の中に未消化の金属があるからじゃろう。餌と間違えて飲み込んだか。和美さん、そいつを司法解剖にかけてみよう。村長の使った凶器が見つかるやもしれんよ」  本市は、和美クレーンの鉄板の下に行き、落下する鯉をキャッチする構えを見せた。  「了解。鉄板の磁力をオフにするよ」  「よっしゃ、村長の犯行をこれで全て......と、ちょい待ちちょい待ちちょい待ちんさいっ!」  鉄板の磁力から解放された、金属ゴミたちが雨のように本市の頭上に降り注ぐ。壊れた自転車や骨の折れた傘、壊れかけのラジオなどが重力に従い、垂直落下して直撃すれば、凶器の雨だ。 どれかが当たってしまうと、頭をかちわられるばかりか、鉄骨が刺さって死んでしまうことは免れないが、地面はぬかるみだ。上から猛スピードで降ってくる金属をかわしながら鯉だけをキャッチするのは本市でも難しい。  「鯉来い、鯉来い、鯉来い、鯉来い!」  本市は降ってくる凶器の雨に目を凝らし、鯉が体をばたつかせながら落下してくる場所に手を伸ばすと、勢いよく凶器の雨の外に転がり込む。
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