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プロジェクトK
一
「犯人はこの池の中に凶器を隠したんぢゃろう。間違いないっ!」
作家、本市平治は緑色に濁ったため池を眺めて、犯人が隠したとおぼしき凶器がここに
あると言いきった。
「そう推理する根拠はなに?」
警視庁捜査一課の石黒かず子は、本市に訊ねた。
「この放置池は、長く人間が手入れをしておらず水草や藻が大量繁殖しとった。そこに色んな人がゴミを捨てて、池の水が、緑色に濁りまくっとるんよ。こんな場所に誰も入りたがるわけがない」
「証拠を隠すには持って来いの場所というわけね。うちらもここに体をつっこんで凶器を探せというの?」
この放置池の中で犯人が隠した凶器を探すとなると、一週間以上はかかる。警察が捜査しやすいように、池は定期的に手入れして欲しいものだ。かず子はため息を吐いた。
「まずは、放置池の水をたくさん抜いてから、生物調査をして、凶器を探しやすくするんよ。探すのは、それからよね」
本市は山の中腹から、ホースを伸ばしてスタンバイするバキュームカーの運転手に「お願いします」と声をかけた。
ホースの先端には魚の稚魚や、細かいゴミに池に棲むカッパなどを、誤って吸い込まないように網がかけられている。放置池の水を抜くと、地面はぬかるみとなるため、かずかずたちは不安定な足場の中、犯人の凶器を探さなくてはならない。
「かず美バキューム、いくよっ! 最大出力でスイッチオン!」
警視庁捜査一課の白石かず美は、バキュームカーの吸引速度を最大にした。ホースが吸い込んだ放置池の水は、河川の近くの沢に放流される。
勢いよく放置池の水がホースに吸われ、引き潮の海水のようにみるみる水位が下がっていく。
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