第1章 Fall case

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第1章 Fall case

2bf61cc3-4cae-4bd4-8fe2-4a8a3d01885f 1  僕は今、hIE(アンドロイド)を尋問している。センサーと記憶媒体の塊であるhIEは22世紀半ばの現代において思想監視装置の何物でもない・・・気がする。2155年現在では少なくともAI政治家の意見集約装置としての役割を担っており、社会に広く深く浸透したhIEは明日にでも特高警察になりうる能力を持っている。いつかそういう社会になるのだとしたら僕は支配者の側にいたいと思った。だとしたらやはり警察官になるのが必然であり、従って僕は今こうして交番でhIEを尋問する立場にいる。 「君が僕の1週間におけるオナニーの回数を把握していることはわかっているんだ。君が正直に答えてくれたら僕はこれを罪に問わない。さあ話してくれ。」  僕の目の前にいる女性型のどこかで見たことある青い服装をしたhIEは毅然とした態度で僕にこう話した。 「未成年が1人で夜中の1時に繁華街をぶらぶらと歩きまわっていることを問題視しているのです。君の両親もさぞ心配なさっている事でしょう。はやく住所と電話番号、そして外出の目的を教えてください。」  それ来た!個人情報を掌握するつもりだ。僕の考えは間違っていなかったんだ。やはり政府の近年の思考監視制度はhIEによって実現されている。でも何かがおかしい、僕は本来政府側にいたいと思っていた人間だ。なぜこのような奇怪な関係性になっているのか? 「興味深い質問だね。それを聞くということはやはり国民の思想監視に加担しているというわけだ。」 「君は自分が補導されたことをわかってるの?君はさっきから陰謀論めいたことを言っているけれど警察としては君を安全に親もとへ帰すのが仕事です。それともセクハラめいた質問で東京都迷惑防止条例違反で検挙されたいのかしら?」 「いや、それはちょっと・・・住所は東京都江東区・・・・。」  僕はようやくこの混沌とした空間の支配者が誰であるのか気づいたのかもしれない。そう、僕は尋問する立場ではなく、尋問される側だったのだ。僕にとってこれは衝撃だった。僕はやっと自分が警察官ではないことに気が付いたのだ。まだ17歳の高校生、9月からの1学期も終わりを迎え、年末にオカルト研究部の密会を深夜に開こうと友人であり部長の速水コウから提案されたのだ。コウのコンテナハウスには夜食がないというので買い出しに出ていたところを女性型hIE警察官に見つかりそのまま補導されたのだ。
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