第1章 Fall case

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 夜中の2時、交番からの電話で起こされた両親は息子が補導されたと知ってきっと悲しむだろう。しかしこの密会は僕、来栖レン、部長の速水コウ、ナイスガイのジョン・レイエスの3人の人類の未来を案ずる極秘会議であり誰にも知られるわけにはいかないのだ。こういうノリは中学2年生の内に封印すべきであったが信念を貫けとガイアが僕に囁いたのだ。そう思考している時に警察無線が聞こえてきた。少し耳を傾けているとクロスナーブ社の宇宙船が東京湾で消息を絶ったらしい。直ちに現場へ急行せよとの指令だった。 「君今日はもう帰りなさい。今日は特別よ。」 「いいんですか?ありがとうございます。」  僕は釈放された。長い刑期だったが政府に屈することなく模範囚として刑務所を出たわけではなかった。そして急ぎ足でコウのコンテナハウスに向かう。 「今戻った。」 「レン、ずいぶん時間がかかったな。警察に捕まったのかと思ったぞ。」 「ああ、警察に捕まった。」 「そうか、そろそろ俺たちの活動も政府の察するところとなったか。」 「レン、コウ、大変だぞ!クロスナーブの宇宙船が落ちた。場所は東京湾だ。」 「ああ、それがあったんで僕は解放されたんだ。」 「クロスナーブか・・・非侵襲型脳機能解析で有名だな。でも確か軍事部門があったはずだ。ジョンが詳しいだろ。」 「私の記憶が正しいなら日本軍に高度AIを納入していることで知られているんだ。あとは小物類、スマートスーツやパワーアシスト関連、複合小銃のFCSと脳の連接設計が代表作だ。」 「さすがジョンだ。僕のにわか仕込みとは違う。」  ジョンは見た目は筋肉マンだが見た目通り軍事に詳しく見た目通り格闘技に秀でている意外性がないほどナイスな男だ。 「俺としてはこの一件、気になるな。レン、ジョン、すまんが今夜はお開きにしよう。この前クロスナーブ関連でニュースがあっただろ、環太平洋諸国共同の超超高度AI開発成功のニュース。」  コウは勘が鋭い奴で大抵外れる。序論は良いが本論がダメな奴だ。けれどリーダーシップと最初に感じた何かは案外無視できない微妙な情報源を頭からひねり出してくる。 「ああ、確か超超高度AIパシフィックリーダーだった。全世界の超高度AIを結集した演算能力よりもたった一台のパシフィックリーダーがはるかに凌駕するんだっけ。そんなものよくIAIA(国際人工知性機構)が許可したよな。レッドボックス(人類未到産物)どころじゃないだろ。」 「開発開始からかれこれ20年、環太平洋地域にある超高度AIが総力を結集して20年かかったんだ。建造認可が下りた時はタイムマシンより難しいと言われていた。AIってのは底が知れないな。おおっと、お開きだぞ。」
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