第2章 Critical contact

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「あなたが速水コウさん、そしてあなたがジョン・レイエスさん・・・この時を待っていました。」  エイダが話しかける。モバイル超高度AIがやることだ、ちゃっかりジョンの真後ろというポジションを手に入れてジョンのすべての行動を監視できる体制だ。 「はじめまして、実は数日前レンとエイダさんが渋谷にいるところを見かけたんだ。最初はカップルかと思ったがレンによるとそうじゃないらしい。俺はてっきりエイダさんがhIEでレンが何かの詐欺にひっかかっているんじゃないかと勝手ながら想像していた。エイダさんがあまりにもお奇麗なので。」 「なるほど、コウさんはレンと違ってストレートな表現をするんですね。レンは私のことをなかなかかわいいと言ってくれなくて。」 「レンは奥手だからな。でも良い奴だよ。俺たちは今日から仲間だ、なあジョン?」 「・・・」 「ジョンどうした?」 「いや、なんでもない。よろしくお願いします、エイダさん。私もアメリカ出身です。同郷同士、お互いに仲良くしましょう。」 「よろしくお願いしますジョンさん。私はカリフォルニア出身です。」 「やっぱりハリウッド美少女という俺の推測は間違っていなかったようだな。」 「コウ、カリフォルニアは広いんだ、ハリウッドに関係あるかどうか。」 「私地元で女優にならないかってスカウトされたこと結構あるんです。なのにレンはなかなかかわいいねって言ってくれなくて・・・悲しいです。」 「エイダ、聞こえてるぞ。容姿は褒めただろ?」 「レン、もっと褒めて。私のパンツ見たいんでしょ?」 「ここでそんなこと漏らすなよ、つい本心が出ただけだ。エイダが太もも戦術でアナログハックしてくるからついね。」 「何の話をしているんだ?」  他愛もない会話が繰り広げられる。客観的に見れば、こういうのが日常で尊い光景なのだ。ジョンの憂鬱とは裏腹にレン、コウ、エイダは楽しそうに会話をしている。自分だけが遠い所にいる気がしているジョンはただただ、普通の人生に憧れるしかなかった。                    *  この日は始業式がメインイベントですぐに解散となった。オカルト研究部の部長であるコウはエイダについて知りたいことがあった、墜落宇宙船の生き残りという件だ。部創設以来の超弩級ネタだ。エイダにインタビューして記事にまとめ上げればオカルト書籍を出版している出版社も食いつくだろう。テレビ局も放っておかないかもしれない。部の躍進と活躍で実績を作れば初代部長として伝説に残るはずだ。僕は正直エイダがアメリカンジョークを言っているのだと信じたかったけれど、エイダの”普通じゃない感じ”はやはり常人とは違う。この際はっきりさせた方がいいのは明白だ。ただエイダが何を言ったところで数々の疑問はある。そもそも生き残れたとしても来るべき場所は僕の家でも学校でもない、病院だ。僕の家に来るたった一日前の出来事で正直胡散臭い。やっぱり特別頑丈なhIEじゃないのかと疑いたくなる気持ちは湧いてくる。でもそんなこと言ったらエイダは落胆するだろう、エイダを悲しい気持ちにはさせたくない。エイダを含めた僕たちはオカルト研究部がある部室で一休みしていた。 「エイダ、衝撃発言するって言ってたけど宇宙船の生き残りは冗談だろ?」 「レン、私は嘘はつかない。成層圏を飛行中に非常事態宣言が出たんだけれどその直後に機体が空中分解し始めて私だけパラシュート降下した。最初に着ていたボディスーツは多機能なんだよ。」 「あのスーツにそんな能力が?米軍のスペースレンジャーみたいだ。」 「レンもコウもジョンも見たことがあると思うけれどギネスチャレンジで大気圏に特殊なスーツを着て再突入した伝説の人がいたでしょ?あれ私のお父さん。宇宙開発エンジニアなんだ。」 「エイダさんはクレイジーだ。そういえばジョンはその手の話に詳しかったよな。」
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