6・皇位継承……(最終章)

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そして,城からも兵士や女官などの侍従達が出てきた。その中には当然ながら,ジョンやエマの姿も……。 実は,これからこの広場でイヴァンが重大発表をすることは,午前中に国中の人々に伝わっていたのだ。伝書鳩(でんしょばと)を使って。 「愛するレーセル帝国民の皆さん。今日はわざわざ集まって下さったことに,心から感謝申し上げたい。今日は私から,皆さんに発表したいことが二つあります」 そこで一旦言葉を切った彼を,国民一同は――侍従達もだが――注視する。 「まず,我が娘のリディア・エルヴァ―トと近衛軍団所属の兵士デニス・ローレアがこの度,結婚することとなりました。一月後に,大聖堂にて二人の婚礼の儀を執り行います」 リディアがデニスと共に笑顔でお辞儀すると,二人はたちまち拍手と大歓声の渦中(かちゅう)になった。 リディアはその中で,一人複雑そうな表情を浮かべている人物を見つける。 (……ジョン?) 彼のこんな表情を見たのは,二週間近く前に港町シェスタでデニスと両想いになったと打ち明けた時以来,二度目だ。
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