港町の悲喜こもごも

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港町の悲喜こもごも

 デニスが見つけた宿は、海岸線のすぐ側にあった。 「いらっしゃいませ! ――あらあら、まあ! これはこれは姫様、ようこそお()し下さいました!」  よく太った陽気な宿のおかみは、リディア達三人が町人風の格好をしているにもかかわらず、いともあっさり正体を見抜いてしまった。もみ手せんばかりに、ニコニコと彼女らを出迎える。 「……変装、意味なかったみたいだな」 「そうね……」  デニスとリディアは、そっと(ささや)きあう。  いくら服装を変えたところで、皇族の(あかし)である彼女の髪と瞳の色はよく目立つので、バレてしまったのも当然の結果といえよう。  バレてしまったものは仕方ないので、リディアも愛想(あいそ)よくおかみに挨拶した。
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