港町の悲喜こもごも

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「おかみさん、今夜はお世話になりますね。――宿代(やどだい)は、一人につきおいくら?」  すると、おかみは大慌て。 「とんでもない! 皇族の方からお代を頂くなんて、(おそ)れ多いことはできませんよ!」 「そういうわけにもいかないでしょう? あなた方にだって、暮らしがあるんですもの。キチンとお金は払わせて。お願い」  皇族だからといって、特別扱いされることが嫌いなリディアは、負けじと食い下がる。  皇女の真摯な眼差しに(こん)負けしたのか、おかみはついに折れた。 「分かりました、姫様。お一人様につき、一泊一〇ガレ頂きます」 「じゃあ、三人だと三〇ガレね」  リディアは財布(さいふ)として使っている(きぬ)の袋から、銀貨を五枚取り出してカウンターに置いた。おかみにニッコリ微笑む。 「二〇ガレはチップよ」 「姫様、ありがとうございます!」
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