3 告白作戦

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3 告白作戦

 丹生くんは昔からよくモテるらしい。そりゃそうだよね。  丹生くんの話をする時の犬井くんは楽しそうで、仲の良さに少し嫉妬した。  私は村永さんをよく知らないので、話題は自然と丹生くんに偏りがちだ。  姉と妹がいる、とか犬井くんとは中学生の頃からの付き合いだとか。そういう話しかしていない。  放課後、私と犬井くんはわざわざ回り道をしてファーストフード店に入り浸っていた。犬井くんの告白作戦を立てる為に。  窓際の席を陣取って、暖かな日差しと共に、道無き会話ばかりが盛り上がっていた。  なんとか本題に戻しながら、犬井くんと村永さんの関係を詳しく聞いたところ、どうも二人きりで会話をしたことすらないという。  私は驚きながら呆れていた。人の事も言えない癖に。 「もしかして、脈ナシが前提なの?」 「うるさい」 「意識してもらえればOKみたいな?」 「しょうがないだろ」  犬井くんはふてくされてジュースを啜っている。振られる覚悟で告白するだなんて、私には信じられなかった。そんなのただ辛いだけじゃないかと思う。  犬井くんと村永さんは1年の時に同じクラスだったらしい。そうして告白の決心がつかないまま2年生になってしまったということだ。とはいえ、好きになったからすぐに告白すればいいってもんじゃないだろうと私は思う。  私は感じたままを彼に言った。 「別に今告白する必要無くない?」 「何で」 「向こうの事、そんな詳しく知らないでしょ? もうちょっと距離縮めてからにしたら?」 「無理だよそんなん」 「何でよ」 「俺、好かれてないから」 「どういう意味」 「そのまんまだよ」  犬井くんは自嘲気味に言った。無理だよ、と呟いた。  この男はどうしてそう自信が無いんだろうか。希望も無いのに、何故想いをぶつけようと思ったんだろうか。  私が正直にそれを伝えると、彼は困ったように笑った。机に身を乗り出し、外を眺めながら言う。
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