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メイちゃんは「ふーん」と興味無さそうに鼻を鳴らしてから、
「私自分で告ったことないから分かんない」
と笑顔を浮かべた。
ま、眩しい。私とは何て縁遠い発言。風香が呆れたような感心したような顔をした。
「勝ち組の発言だね」
「おっほっほ。勝者は黙して語る」
「話は変わるけどさ、ねえメイ、あんた犬井悟って知ってる?」
「ちょっ、風香!」
私は焦って風香を見た。当の本人は涼しい顔だ。メイちゃんは不思議そうに私と風香を交互に見ていたけれど、そのまま気にせず喋りだした。
「知ってるよー? 風香の想い人?」
「違う」
「隣のクラスの背低いのでしょ? 黙っていればそこそこに見えるのに喋ると超残念だよね」
「へー」
「どう残念なの?」
興味無さそうにしている風香をよそに、私は犬井くんの評価が気になって尋ねた。
風香はもう弁当箱を片付け始めているのに、私はまだ最後の一口を残して食べ終われないでいる。完全に食べるタイミングを失ってしまった。
私が少し緊張しながらメイちゃんを見つめていると、彼女は一瞬目を見張って、さもおかしそうに言った。
「え、だって、めっちゃ気弱ってか、いつも愛想笑いしてて不気味」
「ぶ、不気味!? どこが!?」
私は唖然としてしまった。メイちゃんは私の反応を面白がって顔をにやつかせている。
「あれっ、優衣も犬井のこと知ってるの? 意外~!」
「あ、ええと。その……」
「愛想笑い?」風香が首を傾げた。メイちゃんは風香を向く。
「そーそー。楽しいんだかつまんないんだか分かんないけどいっつも人の言う事にうんうんって頷いてばっか。自分の意見とか無いのかよ!ってね。私的には無いわ」
「私的にも無いわー」
メイちゃんに同調するように風香が言った。私は箸を握ったまま弁当箱の中に視線を落とした。煮物の里芋が寂しそうに取り残されている。
無いわー。有り得ないわ。愛想笑い。
少なくとも私が見た犬井くんの表情は作り物じゃなかった。筈だ。私には分からなかっただけ?
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