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し、知らない人だ。
というのが私の率直な感想だ。全然知らない男子だった。
身長は私とほとんど変わらない。どこかで覚えがあるかもしれないので、まじまじ顔を眺めているとばっちり視線が絡んだ。真っ直ぐした目に射抜かれてきゅんとしてしまう。
どうしよう。この人に告白されてもちゃんと断れるかな。心がちょっとだけ揺れた。
男子特有の泥臭い感じが無くて清潔。制服も崩さずちゃんと着てる。誠実そうだ。
ああ駄目だ駄目だ。私には心に決めた人がいる。大体、人は見かけによらないんだってば。風香がよく言っていた言葉を思い出す。『一見良い人でも裏で何をしてるか分からない、惑わされるな』と。あの頃は確かミステリーにはまってたんだっけ。懐かしい和んだ気持ちになってしまったので、慌てて意識を今に戻した。
私は惑わされる前にと、彼に向かって手紙をかざした。
「これ、貴方が書いたものですか」
私が問うと、彼が焦っている様子が何も言わずに伝わってきた。何だろう、この空気から伝心して来る感じ。私まで釣られて焦ってきた。
彼は私に聞こえないくらいの小声で何かを呟いている。言いたいことがあるらしいがいまいちはっきりしてこない。私が不安な気持ちになってきた。
そうか、相手は緊張しているんだ。気付いたら私も緊張してきた。や、やばい。この空気は。告白されてしまう!
ごめんなさい。私は貴方の事を知らないからいきなり付き合うのは無理です。せめてお友達からお願いします。
そう答えようと心に決めた。でも現実は、思った通りには動かないものだ。
いよいよ意を決したらしい彼が突然大声を発した。
「あの! ごめんなさい!!」
私はびっくりして後退る。混乱して固まる。
ごめんなさい、とは? いきなりどうして? 私が振られた?
わけが分からないまま、無言の間は苦しいのでとりあえず返事をした。
「え、い、いいえ……大丈夫です」
なんとも情けない声が出た。
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