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―王子と奴隷娘―【デュオ】
ハミルトン王国、第一王子デュオにひとりの奴隷娘が与えられた。
「今日からデュオ様の遊び相手としてこの城に仕えさせていただくことになりました、アリーチェ・テュアル・メアーナと申します」
彼女の名はアリーチェ。
デュオより二歳年上の彼女は、まだ十二歳の可愛らしい少女だ。
ぼろぼろに汚れた白い服、髪は綺麗な栗色で毛先はくるんと弧を描いていた。
レアリ島南西部にある深海のような美しいコバルトブルーの瞳は、少女の白い肌をさらに引き立たせていた。
しかし、その美しい肌を持った彼女の破れてはだけた胸元には、赤黒く腫れ上がった奴隷の烙印がくっきりと刻まれていた。
恐らくは最近のものに間違いはないだろう。
デュオは一度目に入った烙印を睨み付けると、浅く息を吐き言い放った。
「奴隷か。そのような汚らしい格好でよくもぼくの前に立てたな。しかも女……どういうことなんだ、エドガール」
馬鹿にしてると言わんばかりの飽きれた眼差しでもう一度ため息をつきながら、扉の前の男に問いかける。
エドガールと呼ばれたその中年男性は丁寧に答えた。
「はいデュオ様、彼女はミュルスの港町で奴隷市場に立たされていたところ、遠征帰りの国王陛下の目にとまり城へ連れて戻られたのです。なんでも、もとはメアーナ国の王女だったそうにございます。国王陛下がデュオ様の身の回りのお世話や話し相手にと仰られておりました」
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