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「いつもいつも、ぼくはまだ十歳だ。そんな難しい話ばかりされったって……!」
「ねえ、一日くらいいんじゃないのかな。それにぼくたち楽しみにしていて、もう準備しちゃったんだよ、ほら!」
カリフはそういうと、足元から鞄を取り出しぶんぶんと振って見せた。
「カリフは黙っていなさい。とにかくデュオは部屋へ戻って勉強しなさい。それと、今夜の宴にはしっかり出るように」
王の言葉にデュオは悔しそうに顔を背け俯いた。
「そんな……」
カリフは落胆した声で言った。
カリフが不安な表情でデュオを見るも、目が合うことはなく、デュオは下を向いたままカタンと椅子から立ち上がり荷物を持って部屋を出ていってしまった。
「本当にお行儀が悪い子。あの子には次期国王になるという自覚もなければ、優しさもないわ。勉強は怠るし、国王の器じゃないんじゃないかしら」
エマは冷めた表情で言った。
「怠っていた? ……あの子が?」
王は不思議そうに聞き返した。
「ええそうよ」
エマは顔色ひとつ変えずに返答する。
……聞いた話と違うな、と王は思ったが特に深くは考えなかった。
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