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―疑問―【アリーチェ】
夕方、ハミルトン城内の厨房には世話しなく動き回るコックや召使の姿があった。
「あんた、新人だろ!忙しいんだから、だまって見てないで手伝っておくれよ」
太っちょ女が大きな声で指示を出す。
「は、はい!な、何をすればいいですか?」
その中に、せかせかと忙しく厨房を動き回る幼い少女の姿があった。
アリーチェだ。
「窯の中にそこの生地を入れておくれ」
「わ、わかりました!! 」
アリーチェは、自分の肩より倍以上も大きな鉄板の両端をしっかりと握り締め、熱気を放つ窯の中に力いっぱい押し入れた。
「あんた名前は?」
「アリーチェです」
「そうかい、まだ子どもだね。ああ、シールさん!
そっちはどおだい?」
太っちょの女が世話しなくアリーチェに問いかけたかと思ったら、今度は向かいでパスタを炒める痩せ型男性に話を振る。
「あと1分30秒、29、28、27……23……」
パスタの男性は、麺にバターを手際よく絡めながらカウントダウンを始める。
「ああ、アリーチェ、それが終わったら今度はこっちのスープをたのむよ」
「はい!かしこまりましたっ」
額から流れる汗を軽く拭うとアリーチェは手際よくスープの入った大釜の中身をかき混ぜた。
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