―憂鬱―【デュオ】

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(ぼくが、賊だって?)   もはや笑う余裕すらなくなったデュオの怒りに満ちた形相(けいそう)にアリーチェは圧倒(あっとう)され、(ひる)みそうになりながらも、(はた)から見るとその様子を微塵(みじん)も感じさせない姿を(つらぬ)く。 (この女!人を愚弄(ぐろう)するのにもほどがある。わかって言ってるからたちが悪い) 「お前、自分の立場がわかってるのか!奴隷の分際(ぶんざい)で!お前の処分(しょぶん)厳重(げんじゅう)に考えさせてもらう。もういい、出て行け!ぼくの前から消えろ!」 (父上といい、こいつと言い……ほんと、今日はなんだって) 「お気を悪くされたなら、申し訳ありませんでした。失礼致します、デュオ様」 (当たり前だろう)  少女の影が扉を(はさ)み見えなくなってもなお、デュオの怒りは一向(いっこう)(おさ)まらなかった。 (あいつ、覚えておけ) こんなに小ばかにされたのは生まれて初めてだ。 すごく気分が悪い。 しかもあんなやつに! ……もしかして!? あれも父上の策略(さくりゃく)か? フッ、もう誰も信用など出来ないな。 デュオは、力無くしてベッドに倒れこみ、うな()れた。 (今頃、カリフ達は三人で楽しそうに城下町で買い物でもしている頃か……。宴が始まるまで、やることやんないと……な)
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