闇鴉-ヤミガラス-龍玄・学びの章 令和元年9/12

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闇鴉-ヤミガラス-龍玄・学びの章 令和元年9/12

 アトラスの戦士たちとザックが戦っていた時、世界各地で同じくして、善と悪というべき、魂の衝突が起きていた。まるで、大いなる指揮者の思惑に動かされたように。    どれほどの年月が経ったのだろうか、海は平穏を取り戻していた。アトラス島の優美な姿は、そこにはなかった。姉妹島も半分程が消え失せていた。姉妹島のある箇所の岩肌が微かに動いた。砂が、海へとなだれ落ちる。岩がガタンゴトンと揺れる。地底から押し出された岩が、幾つか転がり落ちていく。   手が、穴から現れた。毛むくじゃらの手だ。岩がどんどん剥がれ落とされていく。全身を毛で覆われた猿のような生命体が、姿を見せた。   「うぉぉぉぉー」   雄叫びは、静寂の海に溶け込んでいった。新たな人類の誕生だった。  場面は、天照空界の記録書庫に戻った。     「新たな人類の始まりってやつか」   法師は、さりげなく言った。続けてこう言った。  「お前が見たモノは、西洋では、《モーセの十戒》と言ってな、島に渡るのに海を割ったという話だ。所、変われば、話は変わる。何が真実で、そうでないか。それは自分で調べるしかない。ただのう、真実も時が過ぎれば風化するものじゃよ。過去に何が起きたかは大切なことだ。しかし、大切なのは未来だよ。明日と言う名のな」  「そうですね」   「この映像は、人類の始まりを見せたものではない」  「では…」   「誰かが上手いことを言ってたな。Night Headって」  「Night Headって…なんですか」  「魂の能力はバーチャルの世界で発揮される。その仮想空間の出来事が現実を動かす糧になる。現実未来の進行表かな。まぁ、そんなことは体験すれば、わかってくること。天照空界の生きるは、発展と進化のために、じゃったな。物体移動やテレパシーなど、余計な才能は不必要だということだ。むしろ、発展、進歩の邪魔になるだけだ。一部の人間が力を発揮すれば、均衡は壊れる、そのために不必要な能力は、休眠されたということを語った映像じゃよ。   結果、特殊な能力を持たないソート族のみが生かされた。神は試されたのだろう。発展・進歩に必要な人類とは何かを。一見便利な才能も、結果として、滅びの要因になった。そしていま、休眠させられた脳は、技術によって自らを滅ぼす道を突き進んでおる。愚かなことよな。作ってしまったものは仕方がない。それを使わぬ世界を作るしかない。武器による力、経済による力、さまざな力は、使い方で、善にも悪にもなる。消極的な意見ではあるが、結果、相手を憎むことではなく、支配することでもなく、他を思いやる心こそが、健全な脳の育成に必要なものだ、と我らは考える。それが、天照空界の世界観だ。才能がなければ、努力すればいい、他人に頼ればいい。そして、いつか頼られるようになればいい。その繰り返しを、淑淑と熟すことで開かれる世界ということかな」   龍厳には実感がなかった。しかし、法師が言わんとすることは、何となく分かる気がした。  「それでいいのじゃ、なんとなくでな。《ケ・セラ・セラ》 なるようになるさ。しっかり現実を見つめ、流れればいい。小さな分岐点を正しく選べば、道は自ずと開くはずじゃ。その手助けをするのが、肉体を借りる代わりの我らのお返しじゃて。Give & Take  与えれば与えられよ。相互利益が我らの生きる道と思うなり、よ。まぁ、じっくり、行こうではないか。明瞭・簡単。 それが一番じゃからのう」
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