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あの日も——真白な花は盛大に咲き誇り、匂い立つほどに甘い香りを漂わせていた。 「ねぇ、あの花の名前知ってる? 」 少女の言葉に、僕は躊躇(ためら)うことなくコクリと頷いた。 「ハクモクレンって言うんだよ」 「ハクモクレン……綺麗な名前ね」 少女はあたりに漂う甘い香りを胸一杯に吸い込むと、嬉しそうに目を細めた。 「いい香り」 僕は、そう言って柔らかく微笑んだ彼女の横顔を眺めながら、そうだね。と、小さく呟いた。 少女に出逢ったのは、ハクモクレンの花がまだ咲き始める前のことだった。
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