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「では、母上の希望が其れならば、日々山の様にある学習は何故だ」
更に突っ掛かる咲矢。
「愚かであれば、他者へ利用される可能性が高くなります。早死に繋がります。様々な知識の量、考える力、其の習慣は護身へ繋がりましょう」
暫しの沈黙。懸命に、更なる言葉を頭で考える咲矢だが、軈て力無く肩を落とす。
「……負けた」
年の功か、己へは志鶴を負かす程の言葉が見つからない。敗北を認めた咲矢。項垂れる咲矢へ、志鶴は気に止める様子も無い。
「では、残り素振り五十八。御願い致します」
「日々の素振り百は多いかと。せめて、三十程減らしてくれないか」
苦笑いを浮かべつつ、軽い調子で譲歩を頼んでみるも。
「百が基本です。其れ以下には出来ませぬ」
何を言ってみても何時も往なされるばかりだ。諦め、渋々残りの素振りを始めた咲矢。そんな主へ、軽い溜め息を吐く志鶴。ふと、先程咲矢が眺めていた桜の木へ目を向ける。まだ咲いてはいない、けれど膨らんだ蕾は、直華やかに魅せてくれるだろうと。
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