ハジマリハ。

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「そなたは、今回選ばれた者等の中で大学の平均成績は最低である。更に、武術に関しても……何故、私に選ばれたか分かっておるか」  僅かに笑み、そう問うてみた沙羅を志鶴は見据えたまま。 「いえ」  静かに答えた志鶴。表情も、瞳孔すらも変化を見せぬ其の顔に、沙羅が目を細める。 「……にも関わらず、重要な試験の成績のみ何時も群を抜いておるからだ」  やはり、変化の無い志鶴の瞳。沙羅は続ける。 「そなた自身に、興味がわいた……私がそなたへ決した理由は、其処だ」  告げられた言葉へ、志鶴は漸く僅かに眉を動かした気がする。そして、徐に頭を下げた。 「……恐れ入りまする」  沙羅は気だるげに、溜め息を吐いた。 「正直、私は我が子への地位等望まぬ。柵(しがらみ)の多い位置だ、面白味に欠けるでな……だが、そなたをつけると面白そうだと思うた」 「沙羅様は、私めに何を期待なさるのか……」  問う言葉に、沙羅の瞳は強く鋭くなった。 「私は、後の二人を信用しておらぬ。条件は一つ、我が子の命は、何があっても守って貰う……其れ以外は、思う様に戯れて見せよ」  暫し、互いに睨み会うが如くの沈黙。志鶴は、身を正して厳かに沙羅へと拜をする。そして。 「咲矢様を、生涯の主とし忠義を尽くします――」  沙羅へと、思いの全てを込め静かに口にした言葉。其れは、沙羅を大いに満足させた様であった。
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