10

6/9
前へ
/62ページ
次へ
「僕を……助けてください」  ルアンの見下ろす目が、僅かに見開かれる。 「助けてやる。だから、此処で待っていろ」  そうじゃないのだと、遼祐は首を横に振る。 「僕が番になりたいのは、あの人じゃなかった……」  顔を顰めるルアンを見上げ訴えかける。  此処に自然と足が向いていた。  それはルアンを求めていたことに他ならない。 「僕は疎い人間だった。光隆さんが番になると言ってくれたのに、僕は躊躇ってしまった。その時点で気づくべきだったのです」  掴んでいる手に力を込める。柔らかな毛の感触が肌を撫でた。 「僕は貴方に会いたくて此処に来たのです。だから――」  暖かな感触が全身を覆い、遼祐は口を噤む。 「リョウスケ。本当に良いのか?」  耳に触れる熱い呼吸と共に問われ、遼祐は首を縦に動かす。毛に覆われた肩口に顔を埋めると、干したばかりの布団の香りがした。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

292人が本棚に入れています
本棚に追加