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「僕を……助けてください」
ルアンの見下ろす目が、僅かに見開かれる。
「助けてやる。だから、此処で待っていろ」
そうじゃないのだと、遼祐は首を横に振る。
「僕が番になりたいのは、あの人じゃなかった……」
顔を顰めるルアンを見上げ訴えかける。
此処に自然と足が向いていた。
それはルアンを求めていたことに他ならない。
「僕は疎い人間だった。光隆さんが番になると言ってくれたのに、僕は躊躇ってしまった。その時点で気づくべきだったのです」
掴んでいる手に力を込める。柔らかな毛の感触が肌を撫でた。
「僕は貴方に会いたくて此処に来たのです。だから――」
暖かな感触が全身を覆い、遼祐は口を噤む。
「リョウスケ。本当に良いのか?」
耳に触れる熱い呼吸と共に問われ、遼祐は首を縦に動かす。毛に覆われた肩口に顔を埋めると、干したばかりの布団の香りがした。
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