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遼祐はまだ他にも獣人がいるのかと肝が冷えたが、どんなに目を凝らしても視界に映るのは、青白い砂浜と黒い海だけだ。
「俺はルアン・グレース。三ヶ月ほど、滞在する予定だ」
突然名乗られて呆気に取られるも、お前はと目で訴えかけられ遼祐は、悩んだあげく天堂家の姓で名乗った。
「確か日本ではファーストネームが後だったな。それならリョウスケと呼ぼう」
それからルアンは何度か口の中でリョウスケと繰り返す。
自分の名前を何度も言われるのは気恥ずかしく、遼祐は居心地悪く足の先を見つめた。
「俺はもう戻らなきゃならない。また会おう。リョウスケ」
遼祐が顔を上げると、すでにルアンは背を向けていた。自分の腕二本分はあるのでは、と思うぐらいの尻尾が生えている。
立ち去る背を遼祐は呆然と見つめた。
突き返すことも出来ずに握りしめていた包みは、汗で少し湿り気を帯びていた。
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