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その為に遼祐は、貿易商の資産家でもある天堂家へと輿入れしていた。
全ては芳岡家の更なる繁栄と、一層の確固たる地位を得るため――オメガの遼祐が出来る唯一のことは、こちらに優位となる家柄との縁を繋ぐこと。
そして家督となる嫡男と番となり、アルファの子を生むことだけなのだ。
発情期になれば、オメガという性は穀潰しにも等しい性となる。
一週間の発情期間には、部屋に篭って体の奥から煮え滾るような劣情に悶え苦しむこととなる。
一歩外に出れば、体から発せられるニオイに釣られたアルファ達に襲われる可能性があった為、家どころか部屋から出るのさえ憚られていた。にもかかわらず、薬どころか、これといった対処法が分からずじまいだった。
第二の性の調べ方すら確立されついない日本では、十歳を超えて発情期を迎えるか迎えないか。又は幼くして秀才の頭角をあらわすかで判断するしかない。
遼祐は両親の願い虚しく、十歳を超えたあたりで発情期が始まった。
父は母を詰り、母は泣いて謝罪した。これまで優しかった兄は、手のひら返しのように見下した態度で接するようになった。
この時から遼祐の運命は決まったも同然だった。
この国でのオメガはアルファに嫁ぐか、絶望に嘆き自害する者が多くを占めていた。
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