7/9
293人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
「で、話とはなんだ?」  二人きりになると、ルアンが口火を切った。 「実は昨日頂いた薬なんですが、天堂家と取引して頂けないかと」 「天堂家か。リョウスケのラストネームが天堂だったな。しかし、お前の実家は造船業ではないのか?」 「僕は天堂家に輿入れしている身なんです。そこの主人が貿易商でして」 「輿入れとは結婚のことか?」  頷く遼祐に、ルアンは腕を組んでソファに凭れかかった。考え込んでいる様子に、すでに取り引きを他の所としてしまったのだろうかと不安が過る。 「もしかして、もう決まってしまいましたか?」  不安を口にするも、ルアンは首を横に振る。 「いいや。そうではない」  では何を悩んでいるのだろうか。遼祐が困惑していると、ルアンが身を起こす。器用にティーカップを口にしてから、小さく息を吐きだした。 「俺としてもその話は有り難い。取引先は多い方が良いからな」 「本当ですか」  思わず遼祐は身を乗り出すも「だがな」と言って、ルアンは鋭い瞳を向けてくる。牽制するような一言に、遼祐は息を呑む。 「何か問題でも……」 「リョウスケは良いのか?」 「えっ?」  何故、そんな事を聞いてくるのか分からず呆気に取られる。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!