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 遼祐の嫁ぎ先が決まった時には、これでやっと役に立てると酷く安堵した。  これでアルファの子を宿すことができれば、風当たりが一気に変わることとなる。少しばかしの希望が芽生えたように思えた。  しかし、その一縷の希望すらも番になるはずの天堂家の嫡男、光隆の腹づもりによって脆く砕け散った。  光隆は番はおろか、使用人に遼祐の発情期を狙って襲わせようとしていたのだ。  発情期に同衾すれば、妊娠する確率が格段に上がる。そこで遼祐を孕ませ、不貞を働いたとして実家に苦情を申し立てようという算段のようだった。  ベータの使用人が「主人の酔狂も困ったものだ」と言って話している姿を、遼祐はたまたま書庫に本を取りに行った際に耳にしたのだ。  婚約から三ヶ月。番はおろか、床すら共にしていない。  光隆は最初から自分を好ましくは、思っていないようだった。それどころか自分だけではなく、芳岡家まで陥れようとしていたのだ。
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