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今夜は、晩酌や散策をしない。贅沢な食事の後は直ぐに部屋に戻り荷物の梱包をした。
「あっという間だったな。でも、人生で最高の贈り物を貰ったよ。本当にありがとう」
「――ん。毎年は無理でも、数年に一回はこんな風に来たいな」
ベストシーズンにグレードの高い部屋で一週間も連泊した。……相当の金額だろうことは、容易に想像できる。
「うん。毎年じゃなくても良いから来たい。いや、絶対に来よう!」
「――ああ」
名残惜しい最後の晩だった。互いにシャワーを済ませ、ベッドに潜り込む。
「あー。寝るのが勿体ないな」
「……ん」
「進次郎、おれ、生きてて良かったよ」
「――ッ!」
「うわっ! おい、なんだよ! びっくりしたー」
進次郎がいきなりおれのベッドに潜り込んできた。こっちがタイミングを見計らって行こうと思ってたのに、先を越された。
「ンン……ッ」
進次郎のキスは上質で濃厚だ――付き合い始めた頃の、あの、おどおどした仕草は微塵もなく、大人の巧妙でいて執拗な――進次郎の思い(愛)が、これでもかというほどおれの中に注ぎ込まれてくる。こうなると、おれの身体は軟体動物みたいにクニャクニャになってしまう。
「優太、愛してる……」
舌でおれの唇を何度かなぞった後、小声で囁いた。色気たっぷりの声音と瞳に、おれの身体は完全に脳からの指令を放棄した。
「ああっ……」
いつになく性急に準備を始める進次郎からも、余裕の表情は消えた。家から持参したコンドームとジェルで後孔をほぐしながら、反対の手でおれの性器を上下に擦り立てる。イキそうになると、擦る手を止め中を拡げることに集中する、慣れた仕草におれの身体も呼応する。そろそろだな――。
「優太、大丈夫か?」
「ん。来いっ!」
指3本で中を丁寧に往復し、無理がないことを表情から読み取った進次郎は、臨戦態勢の自身とおれの性器、両方にコンドームを被せた。その後、つながる場所に再びジェルをたっぷり塗り込んだ。準備が済むと、おれの身体をヒョイと反転し腰を高く持ち上げ、後ろからゆっくりと挿ってきた。
「んんっ。あぁ……」
「だ、いじょうぶ、か?」
「……っ!」
数えきれないほど身体を重ねているのに、亀頭の張り出した部分が大きくて、つるんとしたそれを飲み込むのには勇気がいる。しかし一旦飲み込んでしまえば、それは縦横無尽におれのイイところを刺激する。――進次郎の性器は長い。それは、おれの新たな秘所を見出していた。
「うわああー! し、進次郎……、そこは……怖い――」
「ん……ッ! ゴメン……」
「あああーッ! ヒャッ」
体勢が変わり、進次郎に背を向け座った状態で繋がっている。主導権を握ろうとした矢先、ここ半年ほど進次郎が執拗に刺激してくる奥を下から突き上げ刺激しはじめたのだ。
「ア――ッ!」
進次郎がおれの身体の奥の奥に入り込んできた。その瞬間、目の奥に火花が散り一瞬息が止まったかと思うと、驚くほどの快感に全てが支配された。
射精できないもどかしさに、身体中が発火したような感覚で一瞬意識を手放し――ドライでイった。
この晩、おれは二つのはじめてを経験した。進次郎の長いそれは、直腸の奥にある別の扉を刺激し時間をかけて開発し、とうとう侵入に成功したのだ。もう一つは、生まれて初めて射精せずに絶頂を迎えたこと。
それらは、噂で聞いたことはあったが都市伝説だと思い込んでいた。――まさか、自分が経験する日が来るとは思っていなかった。
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