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「びええええ!!」
また小さな女の子に泣かれた。3歳くらいだろうか。
朝のさわやかな雰囲気の通学路には似つかわしくなく、けたたましい声を上げ泣き叫んでいる。
ただ、女の子が落としたハンカチを拾って渡しただけなのだが。
おれが「はい」、と目の前にハンカチを差し出し、女の子と目を合わせただけ。
だが女の子は一瞬にして口をへの字に曲げ、涙を溢れさせたかと思うと、この大音量だ。
原因はおれの人相の冷たさ。
繰り返すが、おれは小学校時代から「冷たい」とよく言われていた。
子供の時代から、お世辞にも明るい性格とは言えず、ついたあだ名は「ガリガリ君」。
痩せていたこともあるが、それ以上に「ガリガリ君アイスのような冷たさ」という意味だろう。
いつもおとなしく、表情が変化しないことに加え、無駄に目つきだけは鋭い。まるでゴル〇13のようだ。
普通に相手を見ているだけでも、怯えられることがよくあった。
というわけで、子供に泣かれることは悲しいかな慣れている。
女の子がハンカチを手に持っていることを確認すると、おれは学校に向かって歩き始めた。
学校へ着くと、いつものように誰と挨拶を交わすでもなく、黙々と靴を履き替えて教室へ向かう。
高校生には泣かれはしないが、いずれにしてもおれは不人気だ。
入学して半年近く経っても、友達も少なく(というかゼロ)、クラスではいつも一人だった。
こんなおれに近づいてくる人間もいるが、友好を求める人種ではない。
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