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「おりゃ!アイスブレーイク!」
いつものように、ガラガラ声とともに攻撃を仕掛けてくるのは、同じクラスの荒谷勝治。
どこのクラスにも一人はいる、いわゆる「いじめっ子」だ。
何も部活はしてないくせに体格はいいから、ガリガリなおれに抵抗する術はない。
いつもされるがままに吹っ飛ばされたりしている。
今朝の荒谷は、おれが教室に向かって廊下を歩いていると、前から3人の男友達としゃべりながら歩いてきた。
すれ違いざまに、肩を思い切りぶつけてくる。
おれは廊下の窓ガラスに叩きつけられ、派手な音を立てて転んだ。
その音に、近くわ歩いていた何人かが振り向くが、我関せずとすぐに顔をそむける。
おれはさすがにイラッとして、荒谷を睨んだ。
「おー、こえこえ、その目つき。夏にはちょうどいい涼しさだなオイ」
大げさに肩をすくめながら荒谷は去っていく。
「おい、宮門にあんま絡み過ぎない方がいいんじゃね?あいつナイフとか普通に持ってそうだよ」
「んなわけねぇだろ?持ってたってなんもできねぇよ」
他の男子が荒谷を諌めていたようだが、彼は無論言うことを聞かない。
諌める、というより、その男子は本気でおれの報復を怖がっていたようだ。
おれがそんなことするはずもなかろうに…
そんな誤解を生んでしまうのが、おれ自身の雰囲気。誰からも必要とされず、マイナスの効果のみを周囲に及ぼす。
ため息をついて壁から離れて立ち上がり、歩き出そうした次の瞬間。
「うお…」
おれはギョッとして足を止めた。
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