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「何?今のリアクション。それって驚いたの?」
おれの目の前には、同じクラスの福田絵美が立ちはだかっていた。
うん、立ちはだかるという表現が一番しっくりくる。
まるで、おれの進行方向を妨げるかの如く、おれの目と鼻の先に立っているのだ。
「うーん、驚いているんだろうけど…ほーんと宮門君て、顔変わらないよねぇ…むしろ少し冷めてるような」
福田はおれの顔をじろじろ覗き込む。
彼女はいわゆる「カワイイ系」の女子。
どのクラスでも、なんとなくカースト制のように一人一人に序列がついているが、彼女は間違いなく上位に食い込む存在だ。
よく笑う明るい性格で、休み時間の教室は、どこにいても彼女の笑い声が聞こえた。
自然友達も多く、いつも周りには福田を囲う取り巻きが、男女問わずにいた。
ショートカットがよく似合い、振り向くと柔らかそうに揺れる髪に、男なら誰でも一瞬目を奪われるだろう。
生徒会書記、演劇部部長といった肩書も、彼女の魅力にプラスされている。
「おれに何か用?」
荒谷にちょっかいを出された後だ。彼女もおれをからかいに来たのかと不審に感じた。
友達もいないおれと福田の接点は、当然のように一切なく、言葉を交わしたことも数えるほどだろう。
おれにここまでの興味を示す彼女が、不気味に見えた。
「ね、いきなり提案なんだけどさ、私とお笑いやってみない?」
「…………………………は?」
こんな長い間をとったことがないほど、おれはしばらく絶句した。
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