笑う門には福来る

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その日の4時間目は、生物の授業だった。 何かの実験があるとかで理科室で行われることになり、おれは休み時間に教科書を持って移動した。 理科室の授業のときは、いつも黒板に座る席が書かれており、となりに座る男女とペアで実験を行うことになる。 おれの隣の席になる女子は、いかにも「ハズレくじを引いた~」という表情を決まって作る。 おれが今日座る席は… 探すと、意外な席順なことが分かった。 隣の席が、福田だ。 「おおっ、隣宮門君だね。ラッキー、全部やってもらっちゃお」 いつのまにいたのか、おれの背後から福田がにゅと顔を出して、いたずらっぽく笑いかける。 「そんな堂々と宣言されたら、おれもやらないからな」 「それはそれで面白いね。お互い譲り合ったまま何の実験もしないコンビ。ぐふふふ」 福田はつばを口の中に溜めたような声で笑う。顔に似合わず、変な笑い方をするものだ。 しかし福田は、こんなときでも笑いを取ることを頭の片隅で考えているのだろうか。 と、そこでチャイムが鳴り、先生が入ってくる。生徒たちも、それに合わせてぞろぞろと席についた。
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