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「えー、今日は皆さんに、牛の目玉の解剖をしてもらいます」
白衣を着た生物の教師が、何の気なしに言うが、当然生徒からは悲鳴・絶叫の嵐。
目玉の解剖とは、ずいぶんとグロいことをさせるものだ。
「うえええ、そんなことしたら、夕ご飯食べられないよ」
隣の福田も顔面蒼白だ。おれは、当然そんな授業もあるだろうと大して驚いていないのだが。
室内のブーイングなんぞおかまいなしに、教師はペアごとに、牛の眼球を配布していく。
まるでプリントでも配っているようなよそよそしさ。
おれの目の前に、その眼球が運ばれてきた。うん。確かに牛さんの目玉。
少し目の周りに肉がこびりついているのは、どうやら気のせいではないらしい。かなりグロい。
たかをくくっていたのだが、少し吐き気に襲われてしまった。
「…はい」
とりあえず、目玉を福田の隣にスライドさせる。
「…へ?何?」
「おれ無理。きもい」
「それこっちの台詞だから!普通こういうの男子がやるでしょ!?やんないの!?」
「うん、やらん」
「つめたっ。ほんと冷たいよね、宮門君て。こういうときでも無表情だし」
と、おれたちの前の席の女子がクスッと笑うのが見えた。おれと福田のやりとりを見ていたんだろうか。
「あっきー、聞いてた?宮門君ひどいよね?」
「え…い、いや、どうだろう。でも、面白いね」
その女子は、おずおずと言った。
「え?」
おれは耳を疑った。今のやりとりで、周りから見たらそう見えるんだろうか?
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